最新医学セミナー(2018年度)このページを印刷する - 最新医学セミナー(2018年度)

第110回最新医学セミナー報告

テーマ 大牟田地区における摂食嚥下障害に対する連携
~入院から在宅まで~
講 師 社会保険大牟田天領病院 リハビリテーションセンター部長 山﨑 裕子 先生
日 時 2019年3月27日 17:30~18:30
 

第109回最新医学セミナー報告

テーマ パーキンソン病のリハビリテーション
~現場が知っておくべき科学的根拠とその実際~
講 師 社会医療法人青洲会 青洲会病院 副院長 井上 勲 先生
日 時 2019年1月23日 17:30~18:30
参加人数 院外(24名)、院内(54名)
研修内容  PD(Parkinson's disease)に起因する脳障害を神経ネットワーク障害と捉え、脳科学をベースとする神経リハビリテーションの有用性についての講義であった。
 PDの有病率は150人/10万人、65歳以上ではさらに高率で1000人/10万人といわれている。また、PDの発病初期は便秘や嗅覚障害などが先行し、次第に運動機能に障害が現れる。
 運動制御経路を「大脳基底核をブレーキにおいた左足」「小脳をアクセルに置いた右足」と例え、PD治療にはブレーキを効きやすくする薬物療法と小脳を使ってアクセルを踏める手段を考える非薬物療法=リハビリテーションが必要である。この運動制御経路には基底核を主とした内発性随意運動系、視覚・聴覚の刺激を受け小脳を主とした外発性随意運動系があり協動して随意運動ができる。つまりアクセルを踏むのに必要なものが視覚や聴覚などの外部刺激である。映画「レナードの朝」の一場面で、無動の症状が著しい患者が、落ちてくるメガネをすばやく掴み取る場面の紹介があった。視覚が刺激になり動作ができることがよく理解できた。また、YahrIII~IVの患者が「ゴルフが出来るようになりたい」との目標をもってリハビリを行った結果、4週間後にはスムーズな歩行が出来るようになり、念願であったゴルフが出来るようになった事例の紹介があった。このことから、真に患者が求めているものを理解し目標をもってリハビリを行うことが必要であることがわかった。
 PDによる障害は脳のネットワーク障害と捉え、患者の希望を理解しモチベーションを高めること。また、外的刺激を活用しながらリハビリテーションを行うことが重要であることがわかった。
 人生をあきらめない、あせらない、楽しんで後悔させないリハビリテーションを行うことはすなわち患者のQOLの向上をもたらすものであるということも学ぶことができた。
 

第108回最新医学セミナー報告

テーマ 「IgG4関連疾患について」
~新しい疾患概念の成り立ちから最近の話題まで~
講 師 九州大学病院 免疫・膠原病・感染症内科 助教 赤星 光輝 先生
日 時 2018年11月27日 17:30~18:30
参加人数 院外(8名)、院内(58名)
研修内容  多彩な部位での病変を形成するIgG4関連疾患の歴史に始まり、診断基準、病変別診断治療、呼吸器疾患や悪性腫瘍についての詳しい解説があった。 IgG4関連疾患の中でも2大病変といわれるミクリッツ病は、シェーグレン症候群の一亜型として約50年もの間、疾患概念がほぼ消失していた。しかし自己免疫性膵炎と対比され様々な報告や研究により「IgG4関連疾患包括診断基準2011」による診断基準が確立された。現在、ミクリッツ・自己免疫性膵炎・肺疾患・眼症・腎症・硬化性胆肝炎も6つの臓器特異的診断基準について報告され、難病指定されている。しかし、IgG4関連甲状腺疾患は、バセドウ病・橋本病・Riedel甲状腺炎が関係しているが診断基準にまでは至っておらず、解明されていないことが多いとのことであった。 罹患臓器数の多い患者には血清IgG4値が高傾向を示すなどIgG4-RD罹患臓器数と血清IgG4値の関係性や免疫パラメーターの特徴がみられるということが分かっている。リンパ腫のほか一部に固形がんの合併も認められるとの報告もあり、悪性腫瘍を合併するリスクが高い。特にIgG4-RDと鑑別を要する疾患があり、IgG4値の測定を行うことが重要である。 まだ分かっていないことが多い分野であることから、講義終了後は医師からの活発な質疑があり大変興味深い内容であったと感じた。 今回、IgG4関連疾患について、新しい疾患概念の成り立ちから最近の話題までを丁寧な解説でご講義いただき、最新の知見を得ることができた。
 

第107回最新医学セミナー報告

テーマ 糖質制限について
~糖尿病・認知症・がんに糖質は悪いのか~
講 師 大牟田病院 栄養管理室長 戸田 美年
日 時 2018年10月24日 17:30~18:30
参加人数 院外(28名)、院内(33名)
研修内容  国民健康・栄養調査の結果からみた栄養素摂取状況をふまえ、糖質制限食の方法や、糖尿病・認知症・がんに対する糖質摂取の注意点についての内容であった。 国民健康・栄養調査の結果よると、エネルギー・たんぱく質の摂取量は男女ともに60歳代が多く、脂質では男女ともに20歳代が多い結果となり年齢層による特徴が見られた。 糖質制限は制限の程度によって、摂取できる糖質量の基準があり糖質制限する際は食物繊維・脂質・たんぱく質は制限せず十分に摂取することが必要である。また、糖質制限をしてはいけない人や安全性についても示唆があった。 糖尿病については、糖質は適量とることが必須である。糖尿病予防・管理の観点からは、糖質制限より体重管理・運動などが最優先とされる。食事摂取方法として野菜を先に食べるなど、食後の血糖吸収を遅延させる工夫もある。 認知症については、糖質を適量取り、過不足のない栄養補給が認知症予防に繋がるとのことであった。 がんについては糖質をエネルギー補給元の一つとして、栄養状態を悪化させないようにすることが大切であり、糖質制限の必要はないということが分かった。
 

第106回最新医学セミナー報告

テーマ 便秘治療薬について
~新しい作用機序の薬を中心に~
講 師 大牟田病院 薬剤部調剤主任 薮 千亜紀
日 時 2018年9月27日 17:30~18:30
参加人数 院外(22名)、院内(51名)
研修内容  便秘治療薬の分類・近年発売された新しい薬剤について、作用機序から注意点までわかりやすい内容であった。 これまで使用されてきた便秘治療薬をふまえ、新しい薬剤の作用機序から用法・用量・副作用が示され、薬剤の長所と注意点を理解することができた。 オピオイドの副作用でがんこな便秘が生じている患者にとってまた医療者にとっても新しい便秘治療薬は朗報であり、臨床での効果が期待できるのではないかと感じた。 慢性便秘症ガイドラインの説明では、便秘の定義や分類を明確に知ることができた。さらにOCT医薬品(一般用医薬品)について、よく耳にする薬剤に多くの薬が配合されていることや、同じシリーズ名の薬剤であってもそれぞれ違った配合がなされていることを知った。 便秘治療は漫然と薬の使用を続けるのではなく、便秘の原因が何かを正しく判断し適切な薬剤を使用することが大事であることを学ぶことができ講演は大変役立つものであった。
 

第105回最新医学セミナー報告

テーマ 今日から役立つ皮膚科の知識
~お肌の病気からスキンケアまで~
講 師 大牟田病院 皮膚科医長 小西 さわ子
日 時 2018年7月25日 17:30~18:30
参加人数 院外(29名)、院内(75名)
研修内容  Common diseaseからスキンケアまでの幅広いテーマで興味を引く内容であった。参加者は院内外合わせて104名と多数の参加となった。 ステロイド外用剤の種類、強度(5段階)使用のコツなどが理解できた。疾患では水虫(白癬)・疥癬の治療ポイントや入院時の皮膚チェック方法も分かり、実践で活用できると感じた。基本的な皮膚の整理作用やバリア機能についての詳しい説明後、皮膚の老化現象からケミカルピーリングや紫外線対策などの日常の皮膚ケアについて、大変興味深い内容であった。また、スキンケアを効果的に行うためには、根拠に基づき、効果のあるケア方法と外用剤のチョイスをすることが大事であることを学ぶことができた。今回、スキンケア用品のサンプルを準備して持ち帰ってもらうことができ、参加者に好評であった。
 

第104回最新医学セミナー報告

テーマ 「肝炎は治せる時代」到来
~ウィルス性肝炎治療の最前線~
講 師 地方独立行政法人 大牟田市立病院 院長 野口 和典 先生
日 時 2018年6月19日 17:30~18:30
参加人数 院外(10名)、院内(53名)
研修内容  肝炎ウィルスの特性、なかでもB型とC型肝炎ウィルスについて、臨床的相違点や経過、発がん性治療戦略の違い等詳しい解説があった。 C型肝炎治療においてこれまでの肝炎治療の歴史はHTA(インターフェロン治療)時代を経てDAA治療へ(2014年~)と進化した。また、発がん性ではこれまでの認識と違い、HCV感染後の年数ではなく65歳を超えると急激に発がんリスクが高くなることも明らかになった。大牟田市立病院での肝炎治療の過去10年間(618例)の治癒率が示された。ADD治療が始まった翌年より治癒率はほぼ100%になりC型肝炎は完治できる治療薬に到達したといえる。この治療薬の最大の難点が高価であることである。 一方、B型肝炎治療では、現在5世代の経口核酸アナログ製剤が使用され重篤な副作用が少なくなった。また、B型肝炎経口核酸アナログ治療ガイドライン(2017年)により治療適応基準が明確になった。今回の研修で、肝炎治療の変遷と治療をすればほとんどが治癒できることを知り、今後の医療・看護等における示唆を得られるものであった。
 

第103回最新医学セミナー報告

テーマ 平成30年度診療報酬改定について
~在宅医療における人の終末の迎え方も踏まえて~
講 師 医療法人弘恵会 ヨコクラ病院 医師 医学博士 橋爪 章 先生
日 時 2018年4月25日 17:30~18:30
参加人数 院外(21名)、院内(79名)
研修内容 今回のセミナーでは、平成30年度の診療報酬改定について、そのポイントについてわかりやすく解説をしていただいた。 今回の改定では、入院料に関することと、在宅医療に関することの改定が大半を占めている。入院料については、一般病棟入院基本料の「7対1」と「10対1」を再編・統合し、「急性期一般入院基本料」を新設され、患者ニーズに合わせ、柔軟に体制を変更できるようになった。また、「在宅」の考え方についても見直され、これまでの「在宅」の捉え方が拡大された。 特定機能病院と地域医療支援病院には、紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担を徴収する義務があるが、地域医療支援病院の対象が「一般病床500床以上」から「400床以上」に拡大した。大牟田病院も402床とこの基準に該当していくこととなる。 これ以外にも、団塊の世代が全て75歳以上となる「2025年」を見据えた診療報酬・介護報酬同時改定ということで、地域包括ケアシステム構築に向け、医療と介護の連携を推進するためのさまざまな点数が設けられた。目新しい点数としては、情報通信機器の進化に伴う「オンライン診療」を診療報酬の中に位置付けられたこともある。 大牟田地区は、多くの病床数が存在する。そのような中で、互いの病院が存続していくためにも在宅診療を拡大しいくことも一つの手段であることを紹介された。病院受診に縁がなかった人を開拓していくことで、在宅で診療をうけながら、必要時には入院を促すことができ、結果的には患者確保につながっていく可能性があると考えられるということであった。今回のセミナーでは、今回の診療報酬改定において、当院がどのような方向性で努力していくとよいか、その示唆を得る機会となった。