最新医学セミナー(2017年度)
第102回最新医学セミナー報告
テーマ |
大牟田市における地域連携の実際 ~その人らしい生活を支えるネットワークの構築~ |
講 師 |
大牟田医師会訪問看護ステーション 管理者 田中 千香
大牟田医師会ケアプランサービスセンター ケアマネージャー 猿渡 ゆかり
大牟田病院 慢性疾患看護専門看護師 田中 亜由美
大牟田病院 退院調整看護師 松原 浩子 |
日 時 |
2018年3月28日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(38名)、院内(30名) |
研修内容 |
今回、大牟田市における地域連携の実際を通して、自宅療養支援のネットワークの構築を目指して、このセミナーを企画した。訪問看護師田中先生は、訪問看護の制度や利用者の状況、小児在宅人工呼吸器管理、ALS患者の在宅看取りの事例を通して、医師等の多職種との連携について話された。ケアマネージャー猿渡先生は、ケアマネージャーの役割や利用者状況、神経難病と認知症の事例を通して、患者と家族の思いを確認し、病状に沿って、レスパイト入院などの社会資源の活用や多職種連携の実際を話された。当院の松原と田中は、大牟田病院における退院調整と訪問看護の状況、呼吸器疾患患者と神経難病患者の事例を通して地域連携の実際を紹介した。シンポジウム形式では、活発な意見交換となった。当院職員の質問から、大牟田市の緊急時の医療体制や、大牟田市内の訪問看護ステーション同士の看護の質の担保のための連携、本人の在宅療養の意思と異なる家族への関わりなどについて、訪問看護師田中先生から回答を頂いた。その中で、当院の地域連携における課題として、「患者と家族の意思やタイミングを見極めた、質の高い退院調整による在宅療養への移行」「当院の専門的医療の知識と技術、リソースナースを活かして地域関係職種の教育・指導による連携・協働」の必要性を感じた。 今回のセミナーにおいて、参加者にとって、大牟田市における地域連携の実際を知る機会になり、ネットワーク構築につながったと考える。また参加者が各々の役割や課題を考える機会になったと考える。今後も、在宅療養推進の流れの中、病院と在宅をつなぐ地域連携のネットワークづくりに貢献できる企画が必要であると考える。 |
第101回最新医学セミナー報告
テーマ |
肺がんにおける分子標的治療の進歩と現状 |
講 師 |
大牟田病院 呼吸器内科部長 出水 みいる |
日 時 |
2018年2月28日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院内(41名) |
研修内容 |
今回は、肺がん治療(化学療法)について、これまで薬物療法と比較しながら、新しい肺がんガイドラインについての解説があった。 主な死因別死亡率の年次推移をみると悪性新生物が1位であり、その中でも肺癌死亡数が最も多いが、新たな治療薬の開発と共に、非小細胞がんは生存期間が延びてきている。 一次治療に使用されるEGFR-TKI(イレッサ、タルセバ、ジオトリフ)の有効性と有害事象についてや、その後に二次治療としてタグリッソの有効性についての説明があった。新薬の有効性と共に、そこに伴う副作用も問題となるため、治療と同時に副作用の予防や対応が求められる。 今回の研修では、肺がん治療薬の有効性と有害事象を知る機会となり、今後の医療・看護等における示唆を得られるものであった。 |
第100回最新医学セミナー報告
テーマ |
呼吸器2018 |
講 師 |
大牟田病院 院長 川崎 雅之 |
日 時 |
2018年1月24日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(16名)、院内(52名) |
研修内容 |
第100回の節目となった今回の講演の冒頭で、これまでのセミナーを振り返った。医療に関することから、事務(診療報酬など)に関することまで幅広いテーマを実施されてきており、今後も様々な話題が提供できるように努めていきたい。 今回は、呼吸器疾患の治療(新薬)に関することを中心の内容であった。 肺がん治療では、免疫チェックポイント阻害剤の開発および導入により、より効果的治療が可能となった。 喘息治療に関しても、大変有効な薬剤が開発されてきている。これまでコントロール困難だった喘息症状もコントロール可能となり、当院の患者の中にも現在ほとんど発作を起こすことなく生活できるまでに回復できた事例もある。 結核は二類感染症の疾患で、保健所への届出が必要である。また日本は、徐々に患者数は減少しているが、先進国の中ではいまだに結核蔓延国であり、予防指針を軸とした結核対策がとられている。しかし、様々な課題が残されており、多面的な対策が今後も必要である。 喫煙の害についても話しがあった。様々な疾患の原因にもなっているため、禁煙を勧めるためには、依存状態をいかにコントロールしていくかがカギとなる。 今回のセミナーでは、呼吸器疾患の治療薬について、新薬の効果を知ることができ、非可逆的だと考えられていた疾患も、現在は可逆的に治癒可能な時代へとなってきたことを知ることができるものであった。 |
第99回最新医学セミナー報告
テーマ |
運転免許と認知症 |
講 師 |
大牟田病院 神経内科医長 渡邉 暁博 |
日 時 |
2017年12月14日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(17名)、院内(18名) |
研修内容 |
今年3月12日より、75歳以上の高齢者が運転免許証の更新時に受ける認知機能検査の制度が改訂された。講義は、高齢者の運転免許証の保有状況や交通事故の発生状況などについての現状や、運転免許の認知機能検査や当院における適性検査についてなどについて、事例を交えながら紹介された。 自動車の使用は生活に密着しており、なかなか運転免許証の自主返納に応じない人も多い。しかし、行政等のサービスも充実してきている。免許返納後の生活に不安や困難を感じないように、情報提供をしながら、自主返納に応じていけるようなサポートが必要である。 当院は、認知症医療センターの機能をもち、物忘れ外来も行っている。今後も認知症の適正検査を受けに来る方、相談などが徐々に増えていくことが予想される。世の中の状況に応じた対応が求められるであろう。 |
第98回最新医学セミナー報告
テーマ |
最近増えてきた疾患「非結核性抗酸菌症の最新の知見と診察ポイント」 |
講 師 |
大牟田病院 臨床研究部長 若松 謙太郎 |
日 時 |
2017年11月15日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(31名)、院内(53名) |
研修内容 |
非結核性抗酸菌症の概要と現状、病因・病態、予後についての講義内容であった。 非結核性抗酸菌症の感染経路としては、土壌・水系・塵埃に広く存在し経気道的に体内に入る。1990年代頃までは、男性患者が多かったが、それ以降は女性の罹患者が増えている。その要因のひとつに浴室の掃除があり、ブラシをかけた後シャワーで洗い流したときに菌を含んだエアロゾルを吸入しているのではないかという見解もだされた。実際に、患者から検出された菌とその患者宅の浴室から検出された菌の遺伝子型の相同性を認めており、現在もその関係性を検証中である。 また、BMI値と予後についても因果関係があり、BMIが低値である患者のほうが死亡率も高かった。非結核性抗酸菌症は、炎症性の疾患であるためエネルギー消耗が高くBMIが低下していく。更に、栄養摂取量が少ないとBMI値の低下を助長してしまい、予後不良のケースとなりかねない。栄養補給方法を検討し、栄養摂取を補うことも大切であると考えられている。 |
第97回最新医学セミナー報告
テーマ |
慢性疾患看護師専門看護師の活動 ~長期にわたって進行する病と向き合う患者・家族の看護~ |
講 師 |
大牟田病院 慢性疾患看護専門看護師 田中 亜由美 |
日 時 |
2017年9月27日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(4名)、院内(27名) |
研修内容 |
専門看護師とはどのようなことを担っている看護師であるかについて、慢性疾患看護専門看護師の役割や活動の実際について事例を交えた講義内容であった。 慢性疾患患者の看護において、必要な視点として「症状マネジメント」「QOLを重視した緩和ケア」「エンドライフケア」「病みの軌跡」を挙げ、4つの視点から看護のポイントについて解説があった。特に、それぞれの病期に応じて患者の意思決定をどのように支えていくかについて、大変個別性が大きく、事例毎に様々な関わり方が求められ、大変奥深い内容であった。 |
第96回最新医学セミナー報告
テーマ |
女性と頭痛 |
講 師 |
大牟田病院 副院長 笹ヶ迫 直一 |
日 時 |
2017年8月30日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(22名)、院内(75名) |
研修内容 |
頭痛・片頭痛についてのメカニズムと治療・予防方法と、頭痛と女性との関連(月経・妊娠・授乳期における)についての講義内容であった。 日常において頭痛に悩む人は少なくない。天候などに左右され、雨が降る前は頭痛が出るという話しもよく耳にする。今回は、その頭痛について、どこが痛むのか、誘発因子にはどのようなものがあるのか、片頭痛の種類や頭痛の治療や予防について、具体的に解説があった。また、頭痛は女性に多くみられ、その背景には女性特有の月経や妊娠・授乳期との関連があり、女性においては月経などとの関連も踏まえて観察する必要があり、大変興味深い内容であった。 |
第95回最新医学セミナー報告
テーマ |
呼吸のフィジカルアセスメント(視診・聴診編) ~肺の位置を知って正しく聴診しよう~ |
講 師 |
大牟田病院 慢性呼吸器疾患看護認定看護師 高畑 和裕 |
日 時 |
2017年6月28日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(58名)、院内(65名) |
研修内容 |
呼吸器の解剖生理などの基礎知識と、正常呼吸音、異常呼吸音などの呼吸音について聴診・視診の方法や留意点などについての講義内容であった。演習では、実際に呼吸音を聴取したり、模擬モデルを活用し異常呼吸音の聴取体験をしたり、空気の風船や水風船を使用し音の伝道の違いなどを体験した。 聴診の際は、どこの部位を聴診しているのか、どのような音がするのか、聴診したものから何が考えられるのかなどについて、総合的にアセスメントしながら実践していくことが大事である。 |
第94回最新医学セミナー報告
テーマ |
『院内発症の脳卒中の初期対応』 『抗血栓薬の中止と再開について~医療安全を踏まえて』 |
講 師 |
大牟田病院 統括診療部長 山本 明史 |
日 時 |
2017年5月24日 17:30~18:30 |
参加人数 |
院外(26名)、院内(60名) |
研修内容 |
脳梗塞を発症した際の抗血栓薬の使い分けについて、他機関での研究結果を踏まえた講義内容であった。 抗血栓薬を休薬する際に、ヘパリンに置き換えて対処するケースについては、塞栓・出血のリスクが逆に高まるという研究結果もあり、その使用は慎重に行う必要がある。 脳卒中のスケールはNIHSSなど数種類あり、それらは脳卒中患者に携わる医療者として、第3者に相談する際の共通言語となるため必要なものである。 脳梗塞を発症した際の対応としては、発症時刻を把握し、発症4.5時間以内に治療開始することが必要であり、当院のような病院においては、速やかに血管内治療まで対応のできる脳神経外科がある病院へ搬送することが大切となる。 |